2018年の夏休みは早々に珍しい天文ショーが観察できます。それが「皆既月食」と「火星の大接近」です。この火星の大接近は7月31日に日本で観測できます。“大接近というと地球にせまってくるようですが、一定の距離を持って公転いているため衝突(!)するようなことはありません。
それぞれ太陽系の惑星は違う軌道や周期で太陽のまわりを公転しています。その軌道や周期の違いで遠くなったり近づいたりする現象がおこります。今回の“大接近”はその中でも6000万kmよりも近い5,759万kmまで近づきます。これは2003年の5,576万kmから15年ぶりの大接近となります。
2018年7月31日の火星大接近の見える時間と位置
2018年の火星の大接近は2003年から15年ぶりですが、実は火星は2年2か月ごとに地球に接近しています。その接近する距離が6000万kmより近くなると“大接近”といわれますが、その大接近は15年~17年に1度しかおこりません。
地球の公転周期は365日ですが地球より外側にある火星の公転周期は687日です。これに公転速度が加わるとおよそ780日(=2年2か月)ごとに地球と火星は接近します。さらに火星の軌道は地球のような円ではなく楕円のため接近の距離が毎回違ってきます。それが“大接近”“中接近”と距離によって変わってくるわけです。
- 次回の大接近は2035年9月11日の5691万kmの時です。
火星の大接近の観察の仕方
今回の火星の大接近は2018年7月31日とされていますが、実はその前後でも観察できます。観察は6月~9月までできるので7月31日を逃しても大丈夫です。大接近の7月31日になると火星の明るさは-2等級を超える明るさになり夜空にひときわ赤く明るい星として見えます。
観察には天体望遠鏡があれば火星の表面を観察できますが、ない場合は肉眼で星と星座の関係を観察するのもおすすめです。同じ時間で観察するとやぎ座付近で7月31日~8月は左から右に動く火星が長く観察すると8月28日には逆の右から左へ動くようになります。惑星が星座を背景に日々変化していることがわかる現象です。
火星の昇る(見える)方角は南東から南中、南西へと時間と共に移って行きます。すぐそばにやぎ座*が見えるので一緒に探してみましょう。
*やぎ座は逆三角形に見える星座で、南斗六星と呼ばれる“ひしゃく形”をした「いて座」の東側に見えます。
火星の大接近の頃の出没時間
日にち 明るさ 出現 南中 入り
7月31日:-2.8等 18:51 23:32 04:18
8月15日:-2.5等 17:40 22:18 03:02
8月31日:-2.1等 16:30 21:11 01:55
9月15日:-1.7等 15:35 20:21 01:09
9月30日:-1.4等 14:48 19:41 00:36
国立天文台の資料がありますので、確認してみましょう。
>>> NAOJ国立天文台「火星大接近2018特集」
火星をめぐる世界の宇宙戦略と動き
火星は地球にいちばん近く、人の住める環境があるとのことから火星への移住計画など昔から人々の興味や関心は尽きません。
最近ではアメリカの科学誌サイエンス(Science)に欧州宇宙機関(ESA)*の調査により「火星の地中にある巨大な湖の存在を初めて確認した」との論文が発表されました。
*欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)とは、1975年に欧州各国が個々でおこなっていた宇宙研究・開発を共同で行うために設立された研究・開発機関。現在20カ国が加盟している。その中に宇宙計画として今回発表につながった「火星探査機マーズ・エクスプレス(2003年~現在運用中)」がある。
またアメリカのNASAは1993年に「火星探査プログラム(The Mars Exploration Program 、MEP)」を立ち上げ、4つのミッションを掲げてプロジェクトを行っています。
詳しくは>>>NASA Mars Exploration Program
そのミッションとは、
- 火星に生命の兆しが存在するかを確認する
- 火星の気候を特徴づける
- 火星の地質を特徴づける
- 人の火星移住の準備をする です。
2018年5月6日にはNASAの火星探査機「インサイト(InSight)」と小型人工衛星2機が火星へ向けて出発しています。このミッションは“火星の内部構造を調査すること”です。