国内で唯一、ポケットベル(ポケベル、ページャ、マジックメール)を使った無線呼び出し事業を展開している東京テレメッセージ(東京、港区)は来年9月末でサービスを終了すると発表しました。
携帯電話などに押され、利用者の減少が主な原因だそうです。
ポケベルはサービス開始から50年で姿を消すこととなります。
携帯電話が普及する前、多くの人が使っていたポケットベルが、来秋で「8181」。最近の利用者は、特定の業種を中心に約1500人に減っていたといいます。専門家は「平成を象徴するツールが、平成と共に消えてしまうんですね」。 #ポケベル https://t.co/uJ8i9Cm0pr pic.twitter.com/qdG9VwsOSn
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) December 5, 2018
1968年、昭和43年生まれのポケベル
ポケットベルのサービスは、日本電信電話公社(現NTT)が1968年に開始しました。
特定の番号に電話すると端末の呼び出し音が鳴る仕組みで、その後、端末に数字や文字を通知できる機能が追加されました。
特に当初から企業や官公庁、病院関係者などに幅広く活用され、96年には契約数が1千万件を超えた平成初期の時代を象徴する通信サービスだったのです。
2007年にはNTTドコモがサービスを終了しましたが、東京テレメッセージは割安の料金を目玉に、1987年から東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県でサービスを展開し続けました。
同社は1996年には契約数が130万人を超えていました。
携帯電話の出現で利用者激減
通話型の携帯通信機の普及で、契約数が激減し、最近の利用者は約1500人となり、唯一のポケベルサービス事業者となっていた東京テレメッセージはそのサービス提供に終止符を打つことになりました。
「平成初期、一世を風靡(ふうび)しましたが、端末も販売から20年経ったのを一つの契機に、サービスを終了させていただく決定をしました」と、今月、東京テレメッセージがホームページ上で発表しました。
営業マンから女子高生まで利用のポケベル
ポケベルの無線呼び出しサービスは、国内では昭和43年(1968年)に電電公社(現NTT)が開始したのですが、その後、端末が小型化し、持ち運びしやすくなるにつれて、外回りの営業職を中心に利用者が拡大して行きました。
さらに、平成時代の90年代に入ると、女子中高生らがメッセージを送り合うツールとして一大ブームとなったのです。
文字情報の送信が可能になる前は、数字の語呂合わせで「0840(おはよう)」「0833(おやすみ)」「0906(遅れる)」などと意思伝達をする文化が生まれたのです。
一時は女子高生らに「ベル友」ブームを起こし、ドラマや歌謡曲のタイトルにもなったが、携帯電話の音声通話やメールが主流になり、下火になってしまいました。
契約数はピーク時には1000万件を超えたが、90年代後半からは通話やメールの送受信を手軽にできる携帯電話やPHSの普及に伴い、市場は急速に縮小してしまいました。
ポケベルが2019年9月末で終了、ユーザー数は1500人下回る #ポケットベル #東京テレメッセージ #ポケベル #モバイル #業界動向 https://t.co/XUFFaiXlfU
— 日経 xTECH IT (@nikkeibpITpro) December 3, 2018
電波を発しないポケベルは電波に敏感な医療機器などに影響を与えないとされ、現在の利用者にも医療関係者が多いそうです。
ただ、契約数が1500件を切るなど、そうとう収益が見込めない状態となってしまいました。
防災情報サービスとして生まれ変わる技術
東京テレメッセージは無線呼出サービスを終了させますが、今後は「地方自治体向け情報配信サービス」、なかでも「防災無線」に注力するそうです。
東京テレメッセージの清野英俊社長によりますと、「文字通信はあっという間に音声通信に駆逐されてしまいました。
(中略)しかし、文字は音声に比べて、圧倒的に電波で受信しやすいです。
防災無線は途中で切れたり聞こえなかったりしたら困りますが、文字は文字のまま届きます」と説明します。
同社ではすでに、衛星通信とポケベル波を利用した「防災ラジオ」を販売しています。
販売数は約15万台で、防災無線とラジオ放送、どちらも聴くことができるというメリットがあります。
防災無線は文字と音声、両方で受信できるといい、複数の自治体と提携しているそうです。
#ポケベル のサービスが2019年9月末に終了すると話題になっています。ただ、ポケベルには知られざる”第2の人生”がありました。東京テレメッセージの清野社長に聞きました。
「過去の遺物」ポケベルの今 “第2の人生”防災ラジオへの転身ってどういうこと?https://t.co/YfKP3hEmuP
— 文春オンライン[文藝春秋] (@bunshun_online) December 3, 2018
平成の初めの女子学生達が「4649(よそしく)」、「8181(バイバイ)」などと連絡し合っていたツールが、携帯電話に押されて消える運命となりました。
しかし、その技術が今度は人助けの防災情報サービスに生まれ変わったと聞いて何か良かったなと思えます。
このように、一旦廃れたと思われたノーハウが再び我々のために芽生えてくれることがあるのは嬉しいですね。