毎年12月25日の夕方に、繁華街や駅前でクリスマスケーキの売れ残りを必死で完売しようとする店員の姿を見かけます。売れ残ったケーキが無駄にならにようにと祈る気持ちになりますが、半額と言われても私は買う気にはなれません。
日本人の間にクリスマスケーキを食べる習慣が完璧に定着したようで、お菓子メーカーの大きな期待を背負った目玉商品となっています。日本の典型的なChristmas cakeは元祖の不二家銀座店のスタイルをベースにし、スポンジケーキにホイップクリーム(バタークリームも可)を塗り、真っ赤な苺と砂糖細工のサンタやクリスマスツリーの飾りが乗っています。しかし、外国ではこの季節、定番のお菓子やその食べるタイミングは相当違っているようです。
アメリカ人は勿論クリスマスディナーにご馳走を用意します。しかし、結婚式に「Wedding Cake」が無くてはならないのに、クリスマスには「Christmas Cake」がマストなのかといういと、意外にもそうではありません。商業的に売り易くするため、ケーキの名前に「クリスマス」と付ける店はあるでしょうが、伝統的なクリスマスの必需品ではありません。英国植民地時代の名残として、ふつう北米ではこの季節にフルーツケーキをよく食べます。
ご本家のイギリスやスコットランドではDundee Cakeが代表的なクリスマスのケーキです。これはウイスキーをたっぷり使ったダンディー地方のフルーツケーキです。また、それ以外にも、この季節にはドライフルーツをふんだんに使い色々な種類のケーキが食べられています。
フルーツケーキ以外で、英国で有名なのは蒸して作るChristmas Puddingです。現在のクリスマスプディングは我々が想像するカスタードプリンとは違って、ケーキと呼ぶのがふさわしいような固形の食べ物です。なんと、このデザートは中世に食べられていた濃厚なスープから始まった料理だそうです。その後、増粘剤が加えられて固形化し、ヴィクトリア女王がクリスマスディナーの食後に食べたことから、全国にクリスマスのデザートとして広まりました。また、昔は各家庭に自慢のレシピがあったようです。日本のおせちと似ていますね。
その他、クリスマスケーキと呼ばれるものの中にはcup cakeもあれば、日本でもよく見かけるSwiss Roll(別名Chocolate Log、Yule Log)やPanettone(パナトネ)など、様々なスィーツがあるようです。
クリスマスケーキに様々な形があるのは分かりましたが、いつ食べるのかを確認しましょう。クリスマスディナーのデザートなので、当然クリスマスイブですよね!実は、それが当たり前と思っているのは日本人だけのようです。Dinnerイコール夕食と思いがちですが、ディナーとはその日の最も重要な(重い?)食事のことで、朝から夕方にかけて、時代や地域によってかなりの時間の幅があるようです。クリスマスディナーは多くの欧米の家庭では12月25日の午後、教会のミサから帰宅後、家族、親せきや友人が集まって楽しむ食事のことを指します。クリスマスイブはその前夜を静かに過ごします。
以上のことを考えますと、25日の夕方、駅前でクリスマスケーキを安く買って帰るのはかえって「正当」な行為かも知れませんね。