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失楽園:「禁断の果実」は林檎にあらず?

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私の大好物の果物、バナナについていろいろ調べてみたら、びっくりすることが多いのに驚いています。

先ず、松尾芭蕉の「芭蕉」がbananaの和名だと分かり、吉本ばなな以前に「松尾ばなな」が存在したことを知りました。

次に驚いたことは、西洋文明の基礎となる聖書の教えの中の重要な出来事に、バナナが中心的な役割を果たしたことです。西洋では多くの人が「原罪」の存在を信じていることを知っています。

アダムとエバが犯した罪が原因で、人類はエデンの楽園から追放されました。

2人の罪のおかげで、人間は生まれながらにして「罪を負っている」ということになってしまいました。

その2人の罪とは、神の命令に背いて「知恵の樹」に生る「禁断の果実」を食したことでした。その「禁断の果実」とは「リンゴ」に決まっていますよね。

この出来事を描いた世界中の宗教画には、2人の間に「林檎」が描かれているはずです。しかし、これは大きな誤解だと言う学者の発表内容を紹介します。 

 

「ダン・コッペル著「バナナの世界史」によると、古代のインド以西の中東地域において、バナナはイチジクと呼ばれ、マケドニア人のアレクサンドロス3世はインド遠征でバナナを見たとき、これをイチジクと記したとされる。

また、アラビア語で書かれたコーランに出てくる楽園の禁断の果実「talh」はバナナと考えられており、ヘブライ語聖書では禁断の果実は「エバのイチジク」と書かれているとされる。

このことから、実は創世記に出てくる知恵の樹の実は、通説のイチジクではなくバナナであったとする仮説がある。

なお知恵の樹の実をリンゴとする俗説はこれより後世の誤訳に由来する。確かなことは、リンゴは寒冷な中央アジア原産とされ、エデンの園があったとされるペルシャ湾岸では育たないということである。」(「バナナの世界史」p14 ダン・コッペル著 黒川由美訳 太田出版 2012年1月27日第1版第1刷をベースにしたウィキペディアの抜粋)

今までの失楽園の話のイメージが崩れ落ちたような気がします。

エバがアダムに向かって、食べかけのバナナを差し出している様子を想像できますか?さらに、そこに自分の姿を蛇に変えた悪魔が、この出来事を木の上から覗き込んでいるのですよ!

人類の悲劇の瞬間というより、私には何か喜劇的な場面に思えてしまいます。

日本では「失楽園」と聞けば、渡辺淳一の小説とそれを原作とした映画がまず思い浮かびます。

しかし、欧米では、「失楽園」と和訳されている叙事詩「Paradise Lost」を皆が連想すると思います。

「Paradise Lost」はイギリスの詩人John Miltonが1667年に書いた作品で、旧約聖書の「創世記」を元にした内容です。初期近代英語で書かれた古典として有名です。

勿論、和訳はありますが、漫画版まで出版されているのに驚きました。原作は難しそうなので、興味のある方は、まずは漫画版で内容をのぞくのはいかがでしょうか。

     

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